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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

まだ知らぬ蜂蜜の味

花音

 

 この春から社会人になった。大学生の時なんて11時から始まる3限にも行けなかったのに、今はどんなに眠くても、二日酔いでも、9時にはPCを開けてメールを返している。自分でも信じられないほどの大成長である。
 使えるお金が増えると思ったけど、税金が天引きされて、そこから家賃を払って、手元に残るお金は想像していたより少なかった。でも平日は仕事で精一杯な分、自分の時間だけはとびきり大切にしたい。だから、毎週塗り直していたマニキュアを月1回のジェルネイルに変えてみたり、バナナじゃなくて598円のイチゴのパックを買ってみたり、カフェラテはMじゃなくてLを注文したり…。こんな風に、何かを選択するときは、これまで値段を理由に選ばなかった方を選ぶことを、社会人生活のモットーにしている。もちろん手の届く範囲で。そんな小さな幸せの積み重ねが、社会人として働く自分に少しの自信と達成感をくれるのである。
 その代表例が、蜂蜜である。私は中学生の頃から、決まって朝食はヨーグルトに蜂蜜をかけて食べる。起きるのが遅い私にとって、最も簡単に準備できて、すぐに食べられるものだったからだ。ホテルのバイキングでも、あれば必ず食べる。海外のホテルだと、ハチのお尻みたいな木製の丸い物体に持ち手が付いた、蜂蜜をすくうための棒があったりして、それもテンションが上がって良い。とにもかくにも、可能な限り私は朝食に蜂蜜ヨーグルトを食べ続けてきたのだ。
 大学生になって一人暮らしを始めた時、蜂蜜の値段はこんなにピンキリなのかと頭を抱えた。プライベートブランドで1キロ手に入る値段で、国産のものだと350グラムしか買えない。でも必需品だしなぁ、そう考え、4年間は最もコスパの高い業務用の蜂蜜を食べ続けてきた。
 でも今の私は一皮むけた。なぜなら、スーパーの蜂蜜売り場で、国産のアカシア蜂蜜を右手に、カナダ産のクローバー蜂蜜を左手にとって、うーんと悩むことができる。少し高いなあと思うこともあるけれど、気にしない。だって毎日働いてるし。あんなに苦手な早起きも頑張って、そのうえ今のところ無遅刻無欠勤だし。少し怒られたくらいでは凹まないし、飲み会の幹事もやって、休日は思いきり自分の好きなことをしている。まだ知らぬ蜂蜜の味を、体験する資格がある人材だ。
 蜂蜜コーナーで頭を抱えた4年前の自分の姿を重ねつつ、左手にある蜂蜜をカートに入れた。クローバーか、何かいいことありますようにと願いを込めて。

 

(完)

 

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